谷崎潤一郎『卍』

今回は谷崎潤一郎『卍』です。


books.rakuten.co.jp

 

谷崎潤一郎といえば、どんなイメージをお持ちでしょうか。

やはり有名な「春琴抄」や「痴人の愛」などからマゾヒズムやエロティックなイメージをお持ちの方が多いかもしれません。

今回紹介する『卍』もその期待を裏切らない変態性癖が描かれた作品であります。

 

「卍」と聞くと何年か前に流行った若者言葉が思い出されますね笑

本来は「インドに伝わるめでたいしるし」と意味があり、仏の胸に描がかれ、万徳の相を表わすものとして知られているそうです。

他にも「卍形のもの」や「紋所の名」といった意味があります。

また、「卍」という言葉はよく「まんじ巴」といって使われますが、

はてさて、谷崎の『卍』にはどんな意味が込められているのでしょうかね~。

 

谷崎潤一郎『卍』は雑誌『改造』に1928年3月から1930年4月までに断続的に連載された作品です。

文体は大阪弁を基調とした作品で、慣れるまで少し読みにくいかもしれません。

関西育ちではない私は面をくらいました笑

しかし、さすが谷崎といいますか、読んでいるうちに大阪弁の響きが美しく聞こえてきます。不思議なものです。

 

そして大阪弁が使われているとおり、話は大阪が舞台です。

主な登場人物は柿内園子、徳光光子、柿内孝太郎、綿貫栄次郎の4人です。

まずは柿内園子という女性です。

『卍』は彼女の、誰か分からない「先生」に向けられた〈告白体〉という形式で進んでいきます。彼女は夫・柿内孝太郎がいながらも、美術学校で知り合った徳光光子と性的関係を持ちます。

そう同性愛です。

「なんと美しい同性愛だこと」とそれだけ終わるならわけはないのです。

この徳光光子がまた癖もので、魔性の女なのであります。

というのも園子と関係を持ちながら綿貫栄次郎という男とも関係を持っていたのです。

園子は光子に振り回されながら、光子と栄二郎の情事のいざこざに巻き込まれていきます。さらには、園子の夫である孝太郎までも引きずり込まれ、関係はめちゃくちゃに・・・。

 

この小説の面白いところは、、誰が本当のことを話しているのか分からず登場人物が疑心暗鬼になっていくのと同時に、関係がまるで「卍」のように深く入り組んでいくところです。特に、小説終わりは次々と話が展開するため圧倒されます。

 

ドロドロした人間関係の行き着くところを煮詰めて描いたような作品であり、付き合う相手は気をつけなければと思わせるような話でした。

気になる方は是非、お手にとってみてはいかがでしょうか。

 

*****

久しぶりにブログを更新しました。

なかなか忙しくて気が付いたら2ヶ月も・・・。

夏は少し時間が取れそうなので、少しづつ書いていきたいと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!